包丁ブランド「藤次郎」を擁する
刃物メーカー、
藤次郎株式会社の代表取締役社長。
高校卒業後すぐに燕の卸商社に入社し
商売のいろはを学ぶ。
23歳の時、藤次郎の前身である
藤寅工業に入社。
37歳の時に代表取締役に就任。現在56歳。
37歳で父親から会社を受け継いでから、「守る」という意識が強くあった。銀行からお金を借りることも敬遠してきた。既存事業を強くし守ることが自分の役割だと考えてきたところがある。姉が1人、兄が2人という兄弟構成で、家業は兄貴が継ぐものだと考え、10代のころはやんちゃばかりしていた。しかし長男が病気で亡くなり、最終的には縁あって自分が受け継ぐことになった。正直、戸惑った。考えていなかった出来事だったからだ。高校卒業後にお世話になった商社がなければ今の自分はない。ビジネスを面白いと感じることができたことに感謝している。一方で、こうした背景もあったからか、自分には「受け継いだものを守る」という意識が強く残ったように思う。「責任感」こそが自分の経営者としての源泉だった。
6年前。50歳になった時、様々なことを深く考える時間を作った。2007年にリーマンショックが起こり、2011年に東日本大震災が起こった後の社会だったから、不安定であることが常態化していた。必然的なタイミングだったのかもしれない。周りの経営者たちも様々なことを思案していた。このとき10年の計を立てた。自分は65歳で経営を息子に譲ろうと考えている。その前に、まず自分が「守り」から「挑戦」にシフトできないかを真剣に悩み考えた。守っていては負ける、そういう時代の足音をまざまざと感じていた。