長谷川挽物の3代目社長。
大学は福井、その後工業機械メーカーに就職し、20年前にハセヒキに入社。
ある程度安価でありながらも、高精度かつ大量生産可能な金属加工会社への成長させる。
企業経営はとにかく人材とその育成につきるんじゃないですかね。ハセヒキで働いているのはほとんどが高卒です。社会的には勉強ができたわけじゃない。それでも頭の良さとは別なんですよ。勉強ができても頭の悪い奴はいっぱいいるように、勉強ができなくても頭の良い奴はいっぱいいる。そうした人間がここで働けば家のローンが組めて、贅沢はできないかもしれないけれどある程度好きなことにお金を使えて、車をもって、町を胸はって歩けるんだということにしなければいけない。
同時に、社会に役立つ技術やノウハウを身につけてビジネスをしていかなけりゃならない。本当の意味での人生を理解して、哲学を知り、役割を見つけられる場づくりと、人材育成をしていかなけりゃならない。これは経営の責務なんですよ。
ハセヒキは「強く」なりたい。強い企業でいることが、社員にとっても、社会にとっても、関わる全ての人や会社にとって重要だと考えているからです。しかし「強く」あるというのは本当に難しい。昔、ハセヒキについて加工屋として素材にフォーカスしていく会社になるのか、自分たちの技術を生かした製品をつくる会社になるのか振り幅を考えたことがある。結果的には、素材にフォーカスすることを選んだ。素材の世界は魑魅魍魎というか、もうおびただしいまでに難しい素材が溢れている。次々に新しい素材が研究開発されて生まれている。できた素材には、今、加工ができないようなものもあるけれど、10年後には社会が代わりビジネス世界で主流の金属の一つになる可能性を秘めている。
そうやって、日夜素材が生まれては使われている。素材の世界というのは、結局社会そのものなんですよ。だから、素材に強いということは、ハセヒキの「強さ」の根幹にあるべきだと今は考えています。ちなみに、製品を作るというトライもし続けてはいます。こちらは趣味の領域を超えませんけれど、トライすること自体に意味がないということはないですからね。
ハセヒキでは品質技術会議という若手リーダー6人による会議を週一で実施しています。文字通り、ハセヒキの品質について考えていますが、主には加工素材と技術の研鑽が多いですね。ねらいは3つあります。ひとつめは、50人からなるこの会社で実際に外に対して営業したり見積りを作っているのは実質的に私含めて2名です。この層をせめて倍にしたい。仕事は内側にあるのではなく常に外側にある。外の社会を知り、イメージし、お客様と対話できるスキルを社内に広げる必要があります。しかし、見積りひとつ作るのでも、素材、工程、人的リソース、経営などを理解していなければなりません。私は、ただ数字をはじくだけの見積もりなんて世の中に不要だと思っている。
彼らのはこうした本質的なノウハウを理解して欲しいし、そう期待しているんです。二つ目は純粋に加工技術の向上です。難しい素材はどんどんでますし、難易度も上がる一方です。素材によっては刃が当たった時の摩擦で硬度が変わるなんてものもザラです。こうした時に、極論素材を触ったり、化合式を見ただけで作業イメージが構築でき、精度も上げられるような議論をしたい。必ずハセヒキの強さに繋がるはずです。最後は、次世代の経営層の構築です。ハセヒキは私で3代目で、息子に4代目をつがせます。ただし、世襲制は一歩間違えば一気に品質が悪くなる要因でもある。若手リーダー6人は、いわば私の息子を品定めし、最初は敵対するような存在であって欲しい。次の社長が、本当の社長になるには、彼らを納得させて突破していかなければならないのです。実際、自分もそうやってこの会社を継承しました。そのためのこのメンバーであり、品質技術会議なのです。